先週の土曜日、ちょっとした縁からレガシーの大会「けんけん杯」をジャッジとしてお手伝いさせてもらった。草の根のイベント、引いては地域のコミュニティ活性化の助けになるならば、ジャッジ資格を取った甲斐があろうというものだ。

レガシーというフォーマットは、日本ではここ数年で人気が出てきた印象がある。特に首都圏での盛り上がりは筆舌に尽くしがたく、レガシーの大会として国内で最大集客数を誇るAMC(Ancient Memory Convention)が、同じく国内有数のトーナメントであるLMC(Lunatic Moon Convention)と組んで「関東レガシー最強位決定戦」と題した大会を開催するなど、その勢いはとどまるところを知らない。しかも、スタンダードやリミテッドなどの所謂"競技マジック"と近いフォーマットとはプレイヤー層が分かれていたのに、そういった層のプレイヤーも参入することが多くなっているようだ。これからもレガシーの人口は増え続け、レガシーのトーナメントも盛んに開催されるようになるだろう。

ところで、仙台のレガシープレイヤーには2種類いるように思える。"(A)純粋にレガシーをプレイするプレイヤー"と、"(B)自分の持っているカードが使えるという都合上でレガシーをプレイするプレイヤー"だ。これは仙台に限った話ではないのかもしれないが、他の地域については全く情報がないので言及しないことにする。ちなみに、後者のような理由でレガシーを始めて、だんだん面白くなってきたからカードを集めて前者の仲間入りをした、というようなケースが多いのではないだろうか。

そして、レガシーというフォーマットは、当然のことだが、マジックの構築フォーマットの中でもヴィンテージに次いでカードパワーやデッキパワーが高い。スタンダードでは2ターン目《苦花/Bitterblossom》から4ターン目に《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》で《枯渇/Mana Short》されるのに対し、レガシーでは2ターン目に《むかつき/Ad Nauseam》からゲームが終わる。そりゃあ、今まで印刷されてきたカードをほとんど全部使えるのなら、マジック史上で強い順番にカードをデッキに入れていけばいい。高々基本セットと2つのブロックでデッキを作るのとはワケが違うわけだ。

で、そういうデッキを作ってきたプレイヤー(A)と、「ちょっと昔使ってたカード使ってデッキを組んでみました」というプレイヤー(B)が対戦したら、結果は火を見るよりも明らかだろう。いきなり20点のライフを吸われるか、カウンターで妨害されながらタルモなんとか言うやつに数回殴られるか、まあそんな感じだろう。で、負けた(B)は再びカードたちを押し入れの奥にしまい込むか、なにくそと思ってカードを集め始めるか、のどちらかに転ぶ。後者なら晴れてまた新たなレガシープレイヤーの誕生であるが、前者なら日本の尊いマジック人口が一人減ってしまったことになる。

僕の目には、仙台のトーナメントではプレイヤー(A)と(B)のバランスが(ギリギリの均衡を保っているのか、それともちょうど良いのかわからないが)取れているように思える。カードが足りないプレイヤーも、いろいろ工夫して大会に遊びに来てくれている。プレイヤー(A)も空気を読んで、ANTをみんなで持ち込んで暴れる、というような事はしない。それでも資産的な問題なんかで(A)の方が勝ち気味であるけれど、(B)だってそれなりに楽しんでくれているようだ。

でも、だんだん競技志向が高まってくると、(B)のプレイヤーの居場所がだんだん無くなってしまうのではないか、と、ALMCのカバレッジを読んでいてふと心配になった。所謂トーナメントプレイヤーが増えてきて、もっと競技的な雰囲気が高まってくれば、プレイヤー(A)が増える。前述した通り、"真面目に"構築されたレガシーのデッキパワーは高い。すると、(B)は選択を迫られることになる―持っているカードで負け続けても大会に出るのか、それとも(A)の仲間入りをするのか、それとも大会に足を運ばなくなるのか―あんまりいいオチにならないのは、想像に難くない。

断っておくが、僕は、レガシーをやっているプレイヤーに対して、資産的に劣るプレイヤーに合わせてデッキを構築しろだとか言うつもりもないし、マジックの競技化に対して警鐘を鳴らしたいとかいうわけでもない。ただ、将来、そうなってしまったら嫌だなあと思うし、そうなっていない仙台のレガシー環境がとても貴重に思える。もし、僕が予想している出来事が起きたとしたら、今度はChoose Your Own Standard(第5版以降の基本セット1つとエキスパンション・ブロック2つを選び、それらに収録されているカードでデッキを構築する)のようなフォーマットの需要が出てくるのだろうか。何にせよ、これが杞憂であればいいのだけれど。

# Choose Your Own Standardの説明はMTG Wikiより転載。

僕自身はレガシーをほとんどプレイしませんし、そのためレガシーとそれを取り巻く環境に対して詳しくありません。ですので、レガシーに造詣が深い方からのご感想・ご意見などありましたらコメントいただければ幸いです。

コメント

DDD
2009年1月26日23:28

少なくとも仙台でのレガシーを長続きさせるためには、
本文でもEi-mくんが書いているように、(A)のようなプレイヤーと、(B)のようなプレイヤーの共存が必須と思っています。
(A)はもともとマジックが中毒に近いくらいのプレイヤーが多いので、特に気にしなくてもモチベーションを保ってくれますので、(B)のケアが特に必要でしょう。

そのためには、
・あまりトーナメント志向の強い大会にしないこと
(いい加減で質の低い大会、という意味ではありません、念のため)
だと思います。

例えるなら、高額の賞金がかかっている大会が開かれる場合、日頃レガシーに興味のないプレイヤーまで賞金目当てで参加するようになり、あっという間に(A)で埋め尽くされる大会になります。
その結果、タイトルにもあるような外来種が在来種を駆逐するような事態にもなりえるわけです。

と、まあ気付いたら本文に書いてることをそのままなぞったような内容になってしまいましたが、言わんとすることは理解して頂けると思いますw

まはも茶
まはも茶
2009年1月27日0:26

商品を広く浅く配ればいいんじゃないかな?
例えば偶数のラウンドの勝者に配るとか?(実際、PTQとかのサイドイベント的な時の竜王戦はそうだよ)
参加費&会場費にもよるけど・・・
そうすればBの人たちも1パックぐらいなら持って帰れそうじゃない?
1パックでも貰えるって結構嬉しいもんじゃない?

上位賞にもパックを出せなきゃAの人たちがが来なくはなりそうだけど・・・

nophoto
いく
2009年1月27日1:46

フライトを分けるっていう方法もありますよう。
Aフライト…競技指向。参加費高め賞品多めK値高め
Bフライト…親睦指向。参加費少なめ賞品安めK値低め
同じ日に同じ会場で両方やらないと住み分けにならないので、ある程度の大会規模がないと難しいですが。
マジックではあんまりやってないやり方なのかもしれませんが、他の知的競技(ブリッジとか将棋とか)ではけっこう一般的に行われています。
目的はまさに(A)(B)の共存なのですが。
Bフライトのスイス・ラウンドが終了するタイミングを、Aフライトのそれよりも前に設定すると、Aフライトの決勝を満員の観客が見守る状況になったりして盛り上がったりも。

ネタ蒔き
2009年1月27日11:41

AMCはそもそもが2chdオフ会からの派生なので
・お金はあるけど時間が無い
・あらゆる意味でとてもスタンダードにはついていけない
・若い競技プレイヤーとの試合はしんどい

・自分のペースでゆっくりまったり古き良きMTGで遊びたい。その代わりお金には余裕があるので廃人街道まっしぐら\(^o^)/
と言う人が多いですね。
スタンダードが「甲子園優勝→プロ転向を狙う真剣野球」だとすれば、レガシーは「運動不足解消にもなり打ち上げのビールも楽しみな草野球」と言った所でしょうか。
これまでにも草野球を目指したスタンダード大会はいくつかありましたが、どれも甲子園プレイヤーの流入により瓦解してしまいました。ところがレガシーの場合はバットやグローブを買うための初期投資が高額であるため、甲子園プレイヤーが入るに入れず、結果として草野球が成立しているんだと思います。
敷居の高さが上手い具合に作用している感じですね。

Ei-m
2009年1月28日22:36

>DDDさん
盛り上がってくると、リターンが大きくなるように参加費と賞品が上がりそうですよね。(A)が(B)のこと考えなきゃいけない義理はどこにもないんですけれど、マジックコミュニティを盛り上げたい立場からするとやっぱりケアしていきたいですね。

>まはも茶さん
賞品を広く配るのは良いことなんですが、それで(B)のプレイヤーのモチベーションが上がるかというと、そんなに変化はないと思うんですよね。彼らは賞品のために会場に足を運ぶのではなくて、マジックをする機会のためなのではないでしょうか。とすると、5回戦を楽しんでもらおうと思ったら、(A)とは区別して、(B)のプレイヤーだけの大会があればいいのかもしれません。

>いくさん
なるほど。同じ日に同じ会場でやれば、(B)が(A)の仲間入りをするモチベーションも期待できますしね。仙台でやろうとすると、それぞれのフライトで人数が10名ちょっとになりそうなのが問題ですが・・・

>ネタ蒔き時さん
主催者直々にコメントをいただけて嬉しいです。
敷居の高さとトーナメント志向でフォーマットが上手い具合に分けられているなら、やっぱり「グローブとボールしかないけどキャッチボールでもやる?」レベルの大会もあったほうでいいんでしょうね。

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索