「ただ、俺にとって残っている武器は、人を信頼することくらいなんだ」


伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」



仙台を舞台に、首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公が必死に逃げるお話。

どうやら黒幕は相当大きい組織らしく、数ページごとにピンチが訪れます。しかも相手は容赦がありません。周到に罠を張っていますし、主人公を見かけたら余裕で発砲してきます。

で、そんな冷徹なミステリーと平行して描かれるのが、主人公に協力する人達との絆。冒頭の台詞は主人公のものですが、まさにその信頼だけで苦難を切り抜けようとします。ただのミステリーだけではなく、そこに携わる人間を濃厚に描くのが伊坂作品の好きなところです。

終盤の展開は先が気になってどんどん読み進めちゃいましたし、主人公のことを案じる人達の心遣いには何度もホロッと来ました。初めはまったく別々に行動していた登場人物が、物語が進むにつれだんだんと接近していくのが伊坂節というかなんというか。巧妙です。

ひとつ残念なのは、長編であるためと、前半はちょこちょこ読み進めていたために、恐らく鮮やかであったであろう伏線の回収に気がつけなかったことです。一気に読めばもっと面白いはず。今年の本屋大賞にも輝いたようですし、まだ読んだことがない方は是非読んでみてください。

コメント

SRO
2008年12月17日1:23

どもども急かしたようで申し訳ない。
個人的には正真正銘ラストの「たいへんよくできました」が、「よくできました」という二人の関係を決定づけた、しかし物語上些細なことと思われた台詞を最後の最後で最大限に生かしてきたと思って鳥肌立ちました。

nophoto
伊坂節
2008年12月18日0:22

「やけに内省的な冒険野郎だな…」とかですか?魔王からですみません。

Ei-m
2008年12月18日0:44

>SROさん
最後のハンコ押してもらうとこも良かったですね。約400ページ引っ張った伏線の威力がここに。

>名無しさん
ちょっとずれたユーモアというか、今まで読んだことのない文体を"伊坂節"としました。世間一般の"伊坂節"が何を指すかはちょっと分かりません。

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